いらかぐみオフ会
2012
in Tokyo Mitake
-san
10th Anniversary


 「町並みWeb集団いらかぐみ」は、2003年5月、町並みサイト「郷愁小路」の掲示板で知り合った5人のメンバーが、山口県祝島に集まったことに端を発し結成された。普段はそれぞれが自分のサイトを運営しつつ共有された「いらかぐみ」サイトで情報交換し、年に一度オフ会として集まることになった。第1回オフ会は最初に集まった祝島オフ会。以来、メンバーの増減もあり、今年で活動9年、オフ会は記念すべき第10回を迎えた。
 さて、第10回となるとどこにすべきか構えてしまう。例によってオフ会掲示板上で頻繁に意見が交わされた。「今までにない形態の場所がいいのではないか」「なかなか行けない東日本がいい」などという意見で、第10回記念オフ会の場所は、
東京の御岳山に決定した。御岳山は、標高800mの山の中腹にある宿坊集落。「東京にもこんな所があったんだ」という天界の集落で、東京の奥深さを味わえる場所である。

 オフ会は通年通り、コア時間を共有し、以外は自由。つまり、決められた時間と場所に集まって食べて飲んで泊まって、翌朝みんなでその泊まった町並みを歩き解散するというルール。実は、
この各自毎の旅の総体がいらかぐみオフ会である。このレポートは、今回の幹事を務めた野村万訪の旅である。各メンバーの旅についてはそれぞれのサイトをご覧いただきたい。
 
 孫右衛門さんは前日入りし、当日朝から私と彼は一緒に行動を開始した。京浜急行で移動し、子安(神奈川県)の舟屋集落からスタートした。このような舟屋集落は伊根(京都府)が有名だが、漁村から派生し全国にも多く存在していたものと思われる。しかしいろいろ問題もあるようで姿を消しつつある。東京近辺ではここだけであろう。



 品川の四つ横浜寄りの鮫洲駅で七ちょめさんと待ち合わせ。三人で旧東海道品川宿を歩く。この町は私の地元である。このように
地元をいらかぐみメンバーと一緒に歩くのもまた不思議な感じで面白い。旧街道沿いのみならず、裏町も含めて案内した。宿場町といっても関東大震災以降の看板建築や出桁造りの町家がわずかに残るのみであるが、東京の中心市街にあって貴重な空間である。いらかぐみのお二人はどのように感じてもらえただろうか。



 品川駅で孫さんと別れる。孫さんは都心部を歩いた後鉄道で青梅へ。七ちょめさんと私はクルマで関越道で越生(埼玉県)へ向かった。

 越生(埼玉県)は、生糸の市場町として栄えた。関東ならではの出桁造り、蔵造りの町並みは見ごたえがある。三階建ての店蔵には驚いた



 越生から一般道で青梅へ移動した。青梅では、都心部を廻った孫右衛門さん、同じくYasukoさんらと合流した。

 青梅では、旧青梅街道の端から端まで歩く。まず東京方面に向かい、駅近くの飲食店街から旧街道沿いの商店街に出る。旧青梅街道を東へと歩いて行ったら、いままで歩いたことのある範囲よりさらに東にもいい町並みがあった。いらかぐみと歩くとすでに歩いたことがあった町並みであっても必ず新たな発見がある。こういうのは複数人で歩く楽しさである。




子安の舟屋集落(神奈川県)

品川宿(東京都)

品川宿(東京都)

越生(埼玉県) 

越生(埼玉県)
青梅(東京都)

青梅(東京都) 


 ケーブルカーは容易く標高800mの山腹へ連れてて行ってくれる。御岳山駅から山道を歩くこと10分、尾根の上に家々が寄り集まる御岳山集落が見えてきた。この集落は、御岳神社の御師が住む集落で、主に宿坊や店を営んでいる。御岳神社もそうであるが、
よくもこんな山の天辺に集落を拵えたもんだと感心する。
 集落に入っていくと文化財の馬場家の前にスケッチしている人たちがいる。その中にベテランの趣で筆を走らせているKさんがいた。町では必ず彼がスケッチしながら出迎える。
いらかぐみオフ会おなじみの光景である。



 オフ会の宿は御岳山荘。もう一人の幹事である太泉さんが事前の現地下調べまでして選んでくれた。そして、酒と肴などの準備をして宿で出迎えてくれた。さすが!いい宿である
風呂に入り夕食。そしておきまりの楽しい宴会。今日歩いた町並みのことや近況報告など、
毎年変わらないが、それがいい



 二日目。朝飯前に集落を歩く。もちろん御岳神社にも参拝する。集落では見どころのひとつだった茅葺屋根の宿坊が建て替えられてしまっていて残念だったが、ここはやはり独特な風景だ。この風景と環境を是非維持し続けてほしいものである。
 宿の前で記念写真を撮って山を下りる。そして、ケーブルカー下の滝本駅で太泉さんとKさんと残り4人が解散。Kさんは浅草近くの日本堤山谷へスカイツリーを背景とした町並みを描きに、太泉さんは忙しく仕事へ向かった。われわれ4人は、これから奥多摩の天界の村をめぐる。
全員、また来年元気に再会しよう

 

御岳山(東京都)

オフ会の宿 御岳山荘

御岳山荘より町歩き開始

御岳山の早朝歩き

御岳山荘前で記念撮影
 東京都の奥多摩地方(奥多摩町、檜原村)は、全国的にもトップクラスの山深い山村の見られるエリアであり、山の中腹に立地する天界の村もある。まず、JR奥多摩線の終点奥多摩駅のある氷川を歩く。次に奥多摩湖小河内ダムの手前にある中山トンネル上の中山集落。この地方の養蚕農家であるかぶと造り民家が見られる集落だ。



 そして、東京都最奥の集落、峰谷の峰集落と奥集落。谷から駆け上がった尾根上の山岳集落を案内した。奥集落を訪れた後、いったん谷底に下り改めて峰集落へ上るのであるが、道を間違えて行き止ってしまった。するとそこに、切妻造りの総二階建ての養蚕農家がきれいに集まっている集落を発見。ここは留浦(とずら)という集落。小さいけどいい空間だった。やはり、奥多摩の奥地になると養蚕農家はかぶと造りだけではないということがここでも言えると思う。



 奥多摩周遊道路で多摩川の谷から秋川の谷へ風張峠を越える。檜原村は東京都最大の村。かぶと造りの養蚕農家がたくさん残っているエリアである。こういう古民家が東京都内なのにたくさん残っているところが驚くところで、東京のすごいところでもある。「数馬の湯」で蕎麦を食べ、数馬集落を歩く。



 南秋川の谷を下っていくと
人里と書いて「へんぼり」と読む集落がある。以前、良さそうだけどやり過ごした集落だが、時間もあるし歩きたいと申し出たら、皆快諾してくれた。予想に反してあまりないなと思いつつも旧街道を丁寧に探っていったら、最後にグッドポイントを見つけた。河原から採れた丸石垣と入母屋屋根の組み合わせが見事に残っていた。

 さらに川を下り、檜原街道から甲斐方面への街道を分岐しているところにある入母屋やねの多くが残る上乗合集落
五日市戸倉、五日市を案内し、JR五日市線武蔵五日市駅で解散した。



奥集落(東京都)

奥集落(東京都)

留浦集落(東京都)

数馬集落(東京都)

人里集落(東京都)

人里集落(東京都)
 五日市からは、Yasukoさんを乗せて八王子へ。かつて遊郭があった八王子田町を案内。超マイナーな町ながら我々と同じように旧遊里を巡っているような女二人組が先行取材しており、ちょっと引いた。どうも同業者がいると遊里探訪はやりずらい。中央道→首都高と都心部に戻る。スカイツリーが完成する前に開通した東京ゲートブリッヂを案内した。
 東京を山奥から都心まで巡った今回のオフ会。メンバーそれぞれに
もう一つの東京の姿を味わう、いらかぐみならではの旅になったと思う。



 最初にも書いたが、いらかぐみの関係はゆるい。でも
この「ゆるさ」が長続きの秘訣ではないかと思う。来年は十周年。次回オフ会を楽しみにしてそれぞれの旅は続く。

八王子田町(東京都) 

東京ゲートブリッヂ