落折 国境戸倉峠の下 すべて平家姓の落人伝説の里

鳥取県
若桜町
落折



交通







落折



岩屋堂




2006.05.27
鳥取県の東南端、国道29号線で兵庫県へ抜ける戸倉トンネル(旧若桜街道戸倉峠)の手前に「落折」という集落がある。落折は平家伝説の残る辺境の集落で、地名はかつて「落居」と書かれていた。そして、そこに住まう人々はみんな「平家」姓を名乗っている。伝説は、「平経盛とその郎党20人が壇ノ浦の戦いで生きのび、はるばる戸倉峠を越えて落折にたどり着き近くの洞窟に隠れていたが、追っ手が来たと早合点して自害した」、というものである。普通の平家伝説では落ち延びて住み着くパターンだがここでは皆死んでしまう。しかし集落の人は平家姓というのも不思議である。まぁ、伝説なのだからしょうがない。
落折は、中国山地の中でも特に山深い場所にある秘境であるはずだが、国道29号線のトンネルが整備された現在はその雰囲気は薄れている。国道29号線で戸倉峠を越えるとまもなく右側に小さな集落が見える。旧道を入ってゆくと右手に鎮守の森があって脇に墓地がある。いくつもの墓標に書かれた名は全て「平家」さんだ。集落は旧若桜街道に沿った短いもので切妻平入の民家が寄り添って連なっている。半ばから家の谷川に沿って家並みが分岐しており農地へと延びている。人家が途切れその道を400mほど行くと、大きな岩がごろごろしている場所が有る。そこが平家の落武者が隠れたという洞窟であるが、洞窟というより岩の狭間という感じだ。
洞窟から集落に戻るとき、山間にひっそりと抱かれた落折集落の姿を見た。地名の由来といい、全てが平家姓であることといい、話を聞くと一度は行ってみたなる集落である。
国道29号線を兵庫県から鳥取県方面へ、戸倉トンネルを抜け下って行くと、やがて右に見えてくる。
旧道(若桜街道)を鳥取方面から入ったところ。山村の集落であるが軒を連ねる。
右が旧若桜街道、左が平経盛らが隠れたという伝説の洞窟へ至る。
前方に見えるは「落折のイチイ」(県指定天然記念物)。
イチイの木の下。落人伝説を映画化した「八つ墓村」の1シーンに出てくるような場所だ。
旧道から分かれて洞窟方面へ行くと山村らしくなってくる。
平経盛主従の墓がある墓地。後ろに茅葺トタンカバーの民家があった。
洞窟方面への道。
家の谷川。
落折集落の裏に僅かな農地が広がっていた。

農地を抜けると森林に入り、岩がごろごろしている場所がある、そこが伝説の洞窟。(左)

伝説の解説文「落折部落はすべて平家姓である」(上)。

洞窟といっても穴ではなく大きな岩の狭間というかたち。ここに20人も隠れたとは思えない。(左)


落折から国道29号線を5分ほど下ると、不動院岩屋堂がある。重要文化財で昭和32年に修復された。年代不詳だが室餅時代と考えられている。三徳山の投入堂が有名な鳥取県だが、つながりがあるのか。
参考資料 リンク
若桜町

参考文献
『落人伝説の里』 松永伍一 角川書店