滝畑 葛城山系北麓の隔絶性の高い山村集落

大阪府
河内長野市
滝畑




交通

南海高野線河内長野駅よりコミュニティバス






滝畑
 大阪府と和歌山県の県境である葛城山系は600m〜900m弱の山脈ながら予想以上に険しい。河内長野市滝畑はその葛城山系の北麓の閉鎖性の高い谷に形成された集落群である。蔵王峠を源流とする石川の谷に散在する集落は、中世以降変わることなく7ヶ村で戸数は80戸程度であった。生業は炭・茶・凍り豆腐などで、大正期には養蚕も行われたという。石川の滝畑ダムは昭和48着工し昭和56年完工しているが、7か村の半分は水没しダム湖の水面から上方に移動した。
 川の上流にある西ノ村、東ノ村は水没しておらず、草葺屋根の古民家を抱いた集落が残っている。東ノ村の左近家住宅は重要文化財(非公開)に指定された最も古い民家。堂村に18世紀に建てられた梶谷家住宅は村が水没する位置であったため民族資料館として移築されている。いずれも隔絶性の高い山村集落の特徴として周辺農村では見られない棟の高い入母屋造り+妻入り民家である。堂村と対岸の位置にある中村にも立派な屋敷の家が残っている。
 また、ダム湖着工以前に移転した住宅は、どれも立派な塀を巡らした瓦葺の伝統的な工法の民家で、突然山奥にお屋敷街が誕生した趣である。しかし、昔からの住宅も立派な屋敷構えをしており、この地が山奥でありながら割りと裕福であったことが想像される。
 蔵王峠を越えると和歌山県であるが、西日本を縦断する中央構造線にあたる紀ノ川の谷は、大阪府側とは対照的に急斜面となっている。その南斜面は険しいながら日当たりが良好で畑作に適した土地。したがって、「天界の村」が現れる。畑は柿や桃の産地で、家々は急斜面に間隔をとってへばりつく。紀伊半島内陸に分布する急斜面集落「天界の村」の北端である。
西ノ村の草葺屋根の民家。
西ノ村の草葺屋根の民家。入母屋の破風がえらく小さい。

西ノ村集落(左上・左)

東ノ村の「左近家住宅」(国重文)

中村地区の大屋敷(上)

中村地区の民家(右)

水没し上方に移転した堂村地区。
移築保存された旧梶谷家住宅(左・上)
めずらしい妻入横割りが特徴で、家の中は畿内らしく田の字型ベースの6間取り。

堂村の移転住宅。石垣、塀、門など屋敷構えや家屋の造りがすべて立派。移転していない住宅も同様のグレードなので、かつてからこの地域には裕福な家が多いと思われる。

蔵王峠を越えた和歌山県側にある「天界の村」大畑。
参考資料 リンク
河内長野市

参考文献
『図説 日本の町並み7 近畿編』 太田博太郎他 第一法規