にっぽん集落町並み縦走紀行 
  
第26日 酒田(山形県)~上山(山形県)
     酒田  飛島 


飛島(山形県)


 残暑つづく924日晩、庄内米の貯蔵倉、山居倉庫の甍並みが運河の水面に映っている。縦走紀行第25をこの場所で終えた時、目の前にビジネスホテルがあったので3連休の前日に予約しておいた。酒田はいままで何回か訪れているが見ているのは山居倉庫と旧本間家住宅だけで町並みという視点で歩いていない。それには理由がある。いままで古い町並みの情報がなかったこともあるが、昭和51年に発生した大火で古い町並みは残っていないだろうと思い込んでいたからだ。事実、旧本間家住宅の周りは大火後の復興市街地になっていて、旧本間家だけがなんで延焼を免れることができたのかと不思議に思われるほどである。その後、旧遊郭の料亭街に古い町並みが残っているという情報を入手してからは歩きたくて仕方なかった。縦走紀行第26日は、その料亭街の周辺を中心に酒田の旧市街エリアから始めようと思う。
酒田 山居倉庫(山形県)

 29日朝、630起床。ホテルのレストランから山居倉庫を眺めながら朝食をとる。レストランから眺められた山居倉庫は美しく、三度目になるけれどもここを見ない訳にはいかない。700にホテルを出て小さな橋を渡れば山居倉庫である。別の場所のホテルを選んでいたら再訪しなかっただろう。表側もいいけど、裏側もまた良い。改めてその建築美に酔う。次に旧本間家住宅へ移動し外から再撮、しばらく大火後の復興の町並みを歩く。物販系、飲食系の街がつづく。どんどん北へ進み公園のある場所を過ぎると古い建物が現れてきた。そう、この公園こそ昭和51年酒田大火の出火元となった映画館のあった場所なのである。映画館のボイラー室から出火した火事は、強風にあおられみるみる酒田の中心市街地を飲み込んでいった。当時の様子は、ニュースでも中継されていて私も子供ながらよく記憶している。街が燃えている風景はショックだった。大火を免れた町並みとは中心市街地と日和山の間に形成されたかつて遊郭だった場所。立派な料亭建築や酒蔵が良く残っている。日和山は酒田市街を見下ろす高台で、その上にも料亭建築が建っていた。この建物は、映画「おくりびと」のロケ地でもあり、ロケ地観光のスポットになっている。
日和山の料亭
 
 
 

酒田 山居倉庫(山形県)

酒田 大火後復興した町並み(山形県)

酒田 大火を免れた町(山形県)

酒田 日和山下の料亭街(山形県)
 さてこれから、酒田港から今回最大の目的である日本海の孤島飛島に渡る。日本海に浮かぶ北陸東北地方の島は寂しい一人ぼっちの島が多く、粟島(釜谷内浦)、舳倉島と歩いているが、飛島はまだであった。酒田港から高速艇で1時間揺られて飛島港に着いた。最高68m程度の平べったい島には、集落が本州側の海岸線に3箇所ある。1130についた船は1430に引き返すから、3時間で探訪を消化しなければならない。港には無料の観光自転車が用意されていて助かった。自転車で一番離れた法木集落から攻める。
飛島への渡船

 港から自転車をこいで、平坦ながらも起伏のピークを汗をかきながら越えなければならず、ダーッと下ると法木集落だ。この集落は、山を背に主屋を置き中庭を挟んで海岸に面して作業小屋を配置している。隣同士の中庭はつながり集落内の通りを形成している。主屋は比較的間口のある切妻妻入で、特徴といえば妻面の軸組意匠である。軸組を表した妻面というのは土壁の割合のほうが多いのが通常であるが、ここでは全てが木組みで細かく、力学的理由というよりは意匠的な理由により生まれたものではないかと思われる。とにかく密である。人っ気のない集落であるが、作業小屋には人が見え隠れしていた。島に泊まればゆっくり一周したいほどの自然豊かな島であるが、14:00までに港に戻らねばならない。港のある勝浦集落と隣の中村集落も歩いた。民宿がたくさんあり、旅館もあった。かつては、北前船の寄港地でありその後も漁業基地として栄えたのであろうが、小さな島にしては町並みは立派である。港の近くに食堂があるので昼食でもとろうと中を覗いていたら、向かいの家のオバやんが休みだよと教えてくれた。しょうがないので、港の近くの観光客相手の屋台のような店で、飯はなくビールとジャガバタを頼んだ。じゃがいもが旨かった。
飛島港にて
 

飛島 法木集落(山形県)

飛島 法木集落(山形県)

飛島 勝浦集落(山形県)

飛島 勝浦集落(山形県)
 渡船が酒田港に着くと予約していたタクシーが待ってくれていた。タクシーの運転手から昭和51年の大火の時のことを聞いた。昭和51年の大火は、寺町の緑と川によって延焼が食い止められた。川の対岸から川の水をポンプアップして火の粉が川を越すのを遮ったという。そんな中、大火のエリアにあったにもかかわらず、消防隊の火消作戦により旧本間家は守られたという。酒田駅前でクルマを借りる。ここから六十里街道の新道月山花笠ラインで山形盆地へ向かう。出羽三山越えて山形盆地へ下ったところにある寒河江市の白岩地区は「図説日本の町並み」に載ってた場所。以前訪れた時は時間がなく、「無い無い」と慌てて判断していたため、リストから削除するのに少々自信がなく再確認するために再訪した。街道に面して座敷蔵が並ぶ町並みとの紹介であったが、今や2棟しかなかった。あの時の判断は正しかったというわけだ。これでリストからやっと消える。蔵が前面に並ぶ町並みは東北地方に多くみられる。山形盆地北部の金山は中でも質の高いものであろう。【回想】金山(山形県)

 日も短くなったものだ。曇り空ということもあって5:00ですでに暗い。山形市内を再訪しても良かったがもう歩くのはやめよう。あまりの暑さにばてもいる。山形といえばラーメン。美味しいラーメン屋情報を調べたら、山形市内に「けんちゃんラーメン」というのが引っかかり行ってみた。縮れ麺のしょう油味でまぁまぁ。ところが本店は酒田だった。なんだなんだ。
上山のホテルにて
 

寒河江市白岩(山形県)

山形市内のけんちゃんラーメン

【回想】山形市の擬洋風建築(山形県)
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